2018年10月24日、JR西日本は2019年春から運転を開始する新たな有料座席サービスについて、「Aシート」という名称と運用コンセプト、サービスの一部を発表しました。
「Aシート」はJR西日本が京阪神エリアの新快速(JR琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線)で新たに登場します。ロゴマークは、JR琵琶湖線(近江塩津駅?)~JR神戸線(姫路駅?)をゴールドのラインで、湖西線と草津線を青色のラインで「JR琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線の路線記号のA」を図案化したようなデザインとなっているようにも見えます(あくまで管理人の解釈です)。
「Aシート」のスペック
車両のイメージデザインによると、定員は46人、223系1000番台の12両編成の敦賀側4両目(クハ222-1000)を改造した車両が使われます。車内には特急用車両で標準的な2×2列のリクライニング付回転型クロスシートを採用、荷物置き場や車内コンセント、車内フリーWi-Fiなど、快適性を重視した設計となっています。運転本数は1日上下各2往復(改造車両は合計2編成)、乗車料金は運賃+500円、交通系ICカード各種も利用可能となっています。
他社の差別化車両と比べると・・・
「Aシート」はJR西日本のフラグシップである「新快速」の居住性改善が主な導入コンセプトとなっていますが、第一印象(あくまで管理人個人の見解ですが)としては、「京阪の『プレミアムカー』と比べると見劣りする印象がある」と感じています。実際に他社の類似コンセプトの車両と比較してみました。
JR東日本:普通列車グリーン車と比較
JR東日本の「普通列車グリーン車」は首都圏の近郊区間(E231系・E233系横コツ・宮ヤマ基本編成、E531系水カツ基本編成、E217系横クラ基本編成)で終日運用されており、基本的10~15両編成中の2両がグリーン車(2階建)となっています。Aシートと同様に有料座席は全席自由席となっていますが、こちらは駅の窓口や券売機でも購入でき、1編成あたりで多くの旅客が乗車できます。また、殆どの列車でグリーン車が連結されているためAシート以上に利用しやすい車両となります。
名古屋鉄道:1200系と比較
名古屋鉄道の「特別車」は「ミュースカイ」をはじめとする名鉄特急で標準の座席サービスで、「ミュースカイ」は4両編成の全車両が、そのほかの列車では6両編成中の豊橋方2両が特別車(指定席)となっています。Aシートと比べると安さ(特別車指定席料金は1乗車あたり360円)と着席保証(駅でミューチケットを購入する際に乗車する座席が確保されるだけでなく、平日1日1往復分の特定座席を1ヶ月間確保できる「ミュー定期券」も存在する、対して「Aシート」は乗車後に着席料金を払うため、到着するまで座れるかわからない)があることが「Aシート」との最大の違いです。
京阪電車:プレミアムカーと比較
京阪電車の「プレミアムカー」と「Aシート」の最大の違いは「座席の質」。Aシートが2×2列のシート配列であるのに対し、プレミアムカーは2×1列の3列シート配置で居住性をグレードアップ。乗車時間が長いことを生かし、最上級のおもてなしを提供しています。また、1日を通して運転しているためより多くの乗客がこのサービスを受けられます。
阪急電鉄:京とれいんと比較
阪急電鉄の「京とれいん」と「Aシート」の大きな違いは、「コンセプトの独創性」。主に観光利用者向けの車両である京とれいんは車両コンセプトとして「京都らしさ」車両全体に京都らしさをイメージしたデザインが取り入れられています。また、特別料金不要というアドバンテージもあり、大阪~京都間では最安値[Aシート:1060円(大阪駅~京都駅:運賃560円+Aシート料金500円)、プレミアムカー:910円(淀屋橋駅~祇園四条駅:運賃410円+プレミアムカー料金500円)、京とれいん:400円(梅田駅~河原町駅:運賃400円のみ)でお財布にも優しい列車となっています。
自社の黒歴史:関空特快ウイングと比較
関空特快ウイングは関西国際空港の開港に合わせ、当時最新鋭の223系0番台で運行を開始した列車でしたが、早くに運行を終了しました。今回の「Aシート」はこの列車の後継とも言えます。
当時の最新鋭車両であった223系0番台とはいえ、流石に普通列車の自由席用の車両で指定席料金(510円)、をかっさらうという「ぼったくり」状態では流石に・・・
今後、京阪3000系の「プレミアムカー連結計画」、阪急7000系の「京とれいん増備」と京阪間における観光需要が盛んになる中でライバル他社の投資計画も盛んになっています。JR西日本が「Aシート」をどのように発展させていくか、京阪間の交通産業はどのような構図に変化していくのか注目が集まりそうです。